①硝子体手術は、網膜や硝子体のさまざまな病気に対して行われる手術です。この手術により、今まで治らなかった病気が治るようになってきました。
②病気やその程度によって、術後の視力回復に大きな違いがあります。経過によっては再手術が必要になることもあります。
③病気の種類や状態によって目の中にガスや空気を入れる必要があり、その場合は術後に「うつぶせ安静」などの姿勢保持が必要になることがあります。
④人工透析を受けている人、抗凝固剤(血液をさらさらにする薬)を飲んでいる方など、他科で治療を受けている人は教えていただければと思います。
硝子体手術とは?
「硝子体手術」とは、目の中にあるゼリー状組織「硝子体」を切除して眼内の
操作をすることにより、硝子体や網膜の病気を治す手術です。
硝子体手術は、混濁した硝子体や増殖した網膜硝子体の組織、あるいは貯留した血液や病原菌を除去し、疾患が進行する場を除くこと、網膜への牽引を除去すること等で現在、網膜下病変に対する手術まで行われています。
手術方法
網膜硝子体手術は眼科治療の中では最も高度な手術治療の一つです。
機器の改良、進歩に伴い手術方法も適応疾患も変わりつつあります。
手術は局所麻酔で行います。眼球に小さな穴を3ないし4ヶ所あけトロカールを挿入します。 1箇所に注入針を固定して灌流液を入れ眼圧を保ちながら、別の箇所から眼内を照らす照明器具や硝子体カッターを挿入して、出血などで混濁した硝子体や膜様組織を切除して吸引除去します。
硝子体手術が行われる疾患
硝子体手術が行われる主な疾患は、以下のとおりです。
手術費用
自己負担割合 | 片眼 |
---|---|
1割 | 18,000円(上限) |
2割 | 18,000円(上限) |
3割 | 125,000円~160,000円前後 |
- 高額医療の申請(限度額認定証の提示)がある方は限度額が変わる場合があります。
- 症状の程度によって手術の内容が異なるため費用は多少前後する場合があります。
手術器械について
当院ではAlcon社Constellation Vision Systemによる 25G&27G(ゲージ)小切開硝子体手術をいち早く導入しています。眼球の白目の部分に直径0.4~0.5mmという極めて小さな穴を3ないし4箇所開けておこなう手術方法です。傷口が非常に小さいので無縫合で手術を終わることができ、回復が早く、術後の眼の違和感や炎症を従来の手術よりも大幅に軽減することができ、日帰りでの硝子体手術が可能です。
治療スケジュール
手術申し込み
通常は1ヶ月待ちくらいです。手術前には当院での下記術前精密検査の他、手術に際し体の病気が影響しないかどうかなど内科等の医師に問い合わせをさせて頂きます。
術前精密検査
手術を申し込みいただいた方には、手術に必要なデータをおとります。
手術前の点眼
手術3日前の朝から手術当日までの間、抗菌剤の点眼をしていただきます。1回につき1~2滴を点眼してください。
手術当日
手術の約1時間前に来院していただきます。手術当日の朝食、昼食は通常通りでかまいません。来院の際にはご自分で車やバイクの運転をしないでください。手術終了後、しばらく院内で休息していただいたのち、注意事項の再確認をおこないます。その後、保護眼帯を装着したまま、お帰りいただきます。
術後検診
手術翌日は、保護眼帯をしたままご来院ください。目の状態が安定するまでの約1~3ヶ月間の点眼治療が必要となります。 硝子体手術の場合、視力が安定するまで2~3ヶ月はかかります。激しいスポーツ、飲酒、長期の旅行などは医師の許可が出てからにしてください。術後3日間、1週間後、2週間後、1ヶ月後、2ヶ月後以降は適時、診察と検査を行います。 万が一、異常を感じた場合は決められた受診日以外でも早めに受診するようにしてください。
手術の後は、どのくらい良くなりますか?
これは、光を感じる神経組織である「網膜」や、その中央部である「黄斑」の機能が、どの程度、残っているかによって異なります。
一般的に手術とは、悪い部分を切除したり、悪いものを洗い流したり、孔あなやキズを閉じたり、位置がずれている臓器をもとの場所に戻したりはできますが、臓器そのもの、つまり網膜を手術で回復させることはできません。硝子体手術で出血や膜を取り除いたり、剥がれた網膜をもとの位置に復位させたりはできますが、網膜は、自らの力で回復するしかありません。
単純な出血だけで網膜に障害が少ない場合は、もとに近い視力に戻ることがあります。逆に網膜や黄斑にキズがあり状態が悪い場合には、手術がうまくいっても視力はほとんど向上しません。またこれは、手術前に予測はできません。
手術の後の注意点(姿勢制限)
網膜剥離を伴う病気や黄斑円孔の手術では、目の中に空気やガスを入れて治療します。この場合、手術のあとは「うつぶせ安静」など姿勢保持が必要になることがあります。
網膜剥離や黄斑円孔では網膜に孔があり、これが病気の原因です。この網膜の孔を治すには、一定の期間、空気やガスで孔をふさぐ必要があります。
網膜の孔は眼球の後ろのほうにあるので、空気やガスで孔をふさごうとすると、眼球を下向きや横向きにせざるをえません。したがって、うつぶせなど一定の姿勢で安静にする必要があります(姿勢制限)
眼内に入れた空気は1 週間、ガスは2 週間(特殊なガスでは2 ヵ月)程度で自然に吸収されて、なくなります。
したがって姿勢制限の期間は手術後数日~2 週間程度です。
なお、ガスが眼内に入っている間は全身麻酔で「笑気」というガスを使うことはできません。また、飛行機に乗ったり登山や潜水はできません。その理由は、目の中のガスが膨張して目がダメージを受ける恐れがあるからです。
白内障手術について
白内障とは、目の中のレンズ組織(水晶体)が加齢により濁ってくる現象をいいます。硝子体手術では白内障の有無にかかわらず、白内障手術(水晶体切除)も同時に行うことが標準です(ただしすでに白内障手術がすんでいる場合を除く)。
白内障手術をするにあたって、レーシック後の人は移植する人工眼内レンズの度数が異なってきます。
※硝子体手術で白内障手術が必要な理由
① 50 歳を超えると誰でも多かれ少なかれ白内障がある(白内障は病気ではなく、白髪のような加齢現象です)。
②たとえ今回白内障手術を行わなかったとしても、手術のあと半年~数年以内に白内障が生じて、もう一度入院して手術を行わなければならないことが多い。
③白内障があると手術中に眼内がよく見えず、手術が難しい。
④白内障(水晶体)を残したまま手術をすると、水晶体が邪魔で周辺部の硝子体をきれい
に切除できず、それが原因で術後の網膜剥離などの合併症の危険が高くなる。
手術の合併症について
硝子体手術では、術中・術後に以下のような合併症を生じる可能性があります。
この内、出血や感染など術後の見え方に大きな影響を及ぼすような合併症は実際には極めて稀なものですので、通常はあまりご心配いただく必要はありません。
それ以外の一般的に起こりうる合併症のほとんどは、普通適切な治療を施すことにより対応が可能ですので、どうぞご安心下さい。
詳しくは、担当の医師またはスタッフにお気軽にお尋ね下さい。
1.網膜剥離
手術後に網膜剥離が生じることがあります。この場合、再度手術を行うことにより、剥離した網膜をもとに戻す必要があります。
2.出血
手術後に眼内に出血が生じることがあります(硝子体出血)。出血の量が少なければ自然吸収を待つだけでよいのですが、出血量が多く吸収に時間がかかる場合は、再手術をして出血をきれいにする必要があります。
また、手術中あるいは手術後に突然目の奥の動脈から急激な出血を生じることがあります(駆逐性出血)。手術中に血圧が上がった場合、強く緊張した場合、咳き込んだ場合などに起きやすく、頻度は極めてまれですが(発生頻度10,000例に1件程度)、生じた場合は視力が損なわれ失明に至る場合もあります。
3.感染
手術の後、眼の中に細菌が侵入して眼内で強い炎症を起こすことがあります(細菌性眼内炎)。頻度は極めて低いですが(発生頻度2,000例に1件程度)、とくに毒性の強い細菌が感染した場合には高度の視力障害を来すことが多く、時には失明に至る場合もあります。
4.眼圧上昇
手術の後に眼圧が高くなることがあります。多くの場合は一時的なもので、点眼や内服治療でコントロール可能ですが、まれに眼圧が十分下がらない場合には緑内障の手術が必要となることがあります。また、糖尿病網膜症や網膜静脈閉塞症などで病気の勢いが強いときには、血管新生緑内障という特殊な緑内障を起こして極めて治療が難しい状態となり、高度の視力障害を来すことがあります。